やりたいことは、見つけるものではなく育てるものかもしれません

志望理由・自己分析

総合型選抜を受けてみたいけれど、「やりたいことが見つからない」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。

いくつか大学のオープンキャンパスに行ってみたものの決め手が見つからない。大学や学部を調べてみても何かしっくりこない。当然、志望理由書を目の前にしてもまったく手が止まってしまう。

そうこう思い悩んでいるうちに、「自分にはやりたいことがないのではないか」と考えてしまうのだと思います。

ただ、こういった悩みを持つ高校生の話を聞いていると、いつも気になることがあります。

それは、多くの高校生が「やりたいこと=将来の仕事」と捉えていることです。医者になりたい、起業をしたい、海外で働きたい、などなど。

しかし、「やりたいこと」が必ずしも具体的な職種につながらなくても問題ありません。なぜなら、大学は職業を学ぶ場所ではなく、学問を学ぶ場所だからです。

もちろん、医学部や薬学部のように資格や職業との結びつきが強い学部もあります。しかし、多くの学部では、「何になるか」よりも「何を学ぶか」の方が重要になります。

ところが、高校生は進路を考えるとき、「将来どんな仕事に就きたいか」というところから考え始めることが少なくありません。

教師になりたいなら教育学部。銀行員になりたいなら経済学部。公務員になりたいなら法学部。このように考えること自体は間違いではありません。ただ、進路選択の順番としては、少し逆になっているようにも思います。

本来は、「何に興味があるのか」「どんなことをもっと知りたいのか」「どんな問題が気になるのか」といった関心が先にあり、その関心を深く学ぶために大学や学部を選ぶ。その先に仕事があるはずです。

例えば、社会学に興味を持つ人がいたとします。ただ、高校生の段階で「将来は社会学者になりたい」と考えている人はほとんどいないでしょう。

それでも、「なぜSNSでは炎上が起こるのだろう」「なぜ同じ出来事でも人によって考え方が大きく違うのだろう」「なぜ流行するものと流行しないものがあるのだろう」といったことに興味を持つ人はいます。こうした問いは、社会学の入り口になるかもしれません。

そして大学では、そうした問いについて学び、考え、研究していきます。その先の進路は一つではありません。企業で働く人もいれば、公務員になる人もいる。広告業界や人材業界に進む人もいます。

重要なのは、最初にあったのが「○○になりたい」という職業ではなく、「なぜだろう」という興味や疑問だったということです。

多くの高校生は進路を考えるときに、「将来何になりたいですか」という問いを最初に突きつけられます。そのため「やりたいこと」を探そうとすると、どうしても職業名を探し始めてしまいます。しかし、本来大学は職業を学ぶ場所ではなく、学問を学ぶ場所です。

そう考えると、大学選びの出発点は、「将来何になるか」ではなく、「何について知りたいか」の方が自然なのかもしれません。「社会の仕組みに興味がある」「人の心理に興味がある」「経済の動きが気になる」「国際問題についてもっと知りたい」

そうした関心を深めるために大学や学部を選び、その学びの先に仕事がある。順番としては、その方が本来の大学の姿に近いように思います。


総合型選抜の準備を始めると、「やりたいことを見つけなければ」と考える人は少なくありません。ただ、その「やりたいこと」を職業として考え始めると、答えはなかなか見つからないものです。

教師になりたい。医師になりたい。起業したい。そうした明確な目標を持つ人もいるでしょう。一方で、多くの人はそこまで答えが出ていません。

だからといって、「やりたいことがない」というわけではないのだと思います。何となく気になることがある。もっと知りたいと思うことがある。なぜだろうと考えてしまうことがある。そうした小さな興味や疑問も、立派な出発点です。

大学は、その問いを深めるための場所でもあります。もし「やりたいことが見つからない」と感じているなら、将来の職業を探す前に、自分が何に興味を持つのかを考えてみてください。