総合型選抜の志望理由書では、「地域に貢献したい」という言葉を非常によく見かけます。
地域活性化、観光、教育、福祉――。
さまざまな分野に興味を持つ受験生が、この言葉を志望理由の中で使っています。
もちろん、その思い自体が悪いわけではありません。
実際、地域に関わる仕事や活動に魅力を感じることは、とても自然なことだと思います。
ただ、志望理由書という観点で見ると、「地域に貢献したい」という言葉だけでは、どうしても弱くなってしまうことがあります。
理由は単純です。
その言葉だけでは、「その人自身」がまだ見えてこないからです。
大学側は、「地域に貢献したい」という結論だけを知りたいわけではありません。
むしろ、その言葉に至るまでの過程を見ています。
・なぜそう考えるようになったのか
・どんな経験がきっかけだったのか
・地域のどんな部分に関心を持っているのか
・どのような課題意識を持っているのか
そうした部分が見えて初めて、その人らしい志望理由になります。
たとえば、「観光を通して地域を盛り上げたい」という志望理由を書いたとします。
これは一見すると前向きで良い内容に見えます。
しかし、ここで止まってしまうと、多くの受験生と似た文章になってしまいます。
なぜなら、「観光」「地域活性化」「地域貢献」という言葉は、総合型選抜では非常によく使われるからです。
つまり、“正しそうな言葉”だけでは差がつきにくいのです。
では、何が必要なのでしょうか。
重要なのは、「その人自身の経験」と結びついていることです。
たとえば、
「地元の観光イベントで県外の人と接した経験から、自分が当たり前だと思っていた風景や文化に価値があることを知った」
という内容であれば、少し輪郭が見えてきます。
さらに、
・そのとき何を感じたのか
・なぜ印象に残ったのか
・地域のどんな課題を感じたのか
といった部分まで掘り下げられると、「地域に貢献したい」という言葉に説得力が生まれます。
総合型選抜では、「立派な活動歴」が必要だと思われがちです。
しかし実際には、大学側が見ているのは、“経験の大きさ”だけではありません。
むしろ、
「その経験をどう捉えたか」
「そこから何を考えたか」
という部分の方が重要になることも少なくありません。
同じボランティア経験でも、書く人によって志望理由書の深さが大きく変わるのはそのためです。
また、「地域に貢献したい」という言葉には、便利な反面、危うさもあります。
便利な言葉というのは、気づかないうちに“考えた気になってしまう”からです。
本来であれば、
・なぜその大学なのか
・なぜその学部なのか
・将来どんな形で地域に関わりたいのか
まで考える必要があります。
しかし、「地域に貢献したい」という言葉だけで文章をまとめてしまうと、そこから先の思考が浅くなってしまうことがあります。
志望理由書では、「正しいことを書く」ことよりも、「自分の考えを具体的につなげる」ことの方が大切です。
抽象的な理想を並べるよりも、
・自分が何を見て
・何を感じ
・なぜその進路を考えるようになったのか
を丁寧に整理した方が、読み手にはずっと伝わります。
逆に言えば、特別な実績がなくても問題ありません。
大切なのは、「自分の経験をどこまで言葉にできるか」です。
その整理ができると、志望理由書は単なる作文ではなく、「その人自身」が見える文章になっていきます。
